乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
二人を包む新たな火種
 ウェディング企画を細々と進め、方向性が見えてき、皆がやる気になっているときに事件が起きたのたのだ。

 連条雅輝と結城財閥の娘の婚約で盛り上がりを見せていたワイドショーの話題が、突然、その話で持ちきりになった。

「リアンが手掛けた新たなウェディングホール、素敵ですよね~!」

 そんな声がブラウン管越しに聞こえてくる。杏樹が企画し、難波が奪い取った企画が現実になり、先日オープンしたウェディングホールが人気だと話題沸騰なのだ。

 ステンドグラスに絵を描いた作家は、クリスフォード・アラン氏が描いて貰えないときはこの画家で行こうと話していた画家だった。打診もしていたが、保留になっていた画家だった。

「なんで……!!」

 杏樹は最初、耳を疑った。でも、ブラウン管越しに映るリアンプロデュースのウェディングホールや、アナウンサーの質問に堂々と答える難波の姿を見て、顔をしかめた。

「やられたな。」

 ウェディング企画室のみんなは、雅輝のその言葉に撃沈した。

「でも、あと3ヶ月先のプレオープンの内容は告知して、メディアもステンドグラスの教会については知ってたじゃないですか…こんなのって…あんまりだよ。」

 杏樹は悔しそうにしているのが皆に伝わる。

 前もってステンドグラスの教会についてはラポールのウェディングの目玉として、すでにメディアに伝えてあったにも関わらずバッシングを受けるのは、何故かラポールで、それもクリスフォード・アラン氏が手掛ける予定なのは本当なのかと言われ初めていた。

 未だにクリスフォード・アラン氏で行くのかは協議する予定なのか決まってはいなかった。だが、メディアがクリスフォード・アラン氏の名前を出したことで、みんなの注目が高くなり、彼にお願いしないと行けなくなってしまった。

 難波の策略だろうか。杏樹は、どうせ、連絡なんてとれないだろと言われているような気がしてならなかった。

「俺達が注目されるには、クリスフォード・アラン氏を引っ張るしかないのか。でも、連絡なんて取れないしなぁ…。」

 ゆずるがボツりと呟く。皆も、同じことを思ったらしく頷いている。

 雅輝の表情もこれまで以上に険しく、落ち込んでいる様子が窺える。

 杏樹が唯一、クリスフォード・アラン氏と連絡をとれるであろうことを知っている雅輝は、隣の部屋に杏樹を呼んだ。

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