乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 廊下で中の様子を伺っていると、近くの襖が開き、直哉が顔を出し、副社長の側までやってきた。

 白愁先生に一礼し、副社長に小声で離す。

「トラブルがありました。立花さんが部屋を片付けるのに5分くださいとのことです。」

「料理は?」

「メインが作り直しになるので、先にあるものを食べて頂き、その間もどうにかするので、大丈夫とのことです。」

「わかった。杏樹に従うよ。」

 二人の会話を白愁先生は、聞こえないふりをしゆずると庭を眺めている。

 そこにまた、あやめ達の怒鳴り声が聞こえてくる。襖が開いたままだったことに直哉が気がつくが、今さら閉めに行くのもと思い、皆が渋い顔になる。

「結城さん、お静かに。もし、廊下にいれば聞こえてしまいます。」

「あなたね?事の重大さが分かってないのよ?いい、白愁先生にも連条さんにも、私たちにも迷惑がかかるのよ?」

「口ばかり動かさずに、手を動かして下さい。」

 畳や座布団など汚れた物もたくさんあるが先程から杏樹となずなと仲居だけが掃除をし、綺麗な着物を汚すまいと掃除をしないあやめに杏樹は、もの申した。

「叱りつけて何になるんですか?」

 掃除をする手を止めて杏樹があやめを軽く睨みつける。

「私はラポールのことを思って言ってるのよ?」

「君は本当に、ビジネスのことが分かってないな。信頼が大切なんだよ?」

 あやめとあやめの父に畳み掛けるように言われる。なずなが"なっ!?"と、言い返しそうになるのを杏樹は制した。

「お二人とも、それはラポールのためでも何でもなく、この場所を提供した自分たちのメンツがつぶれるからですよね?雅輝さんは、まず叱りつけたりせず、"大丈夫"かと心配すると思います。これは、ラポールのビジネスのことですからお二人とも黙ってて下さい。」

 それを聞いた結城親子は不機嫌になり、二人に専務は平謝りしていた。

 しかし、チラリと様子を見ていた雅輝は、クスッ笑ってしまい、その顔が幸せそうに見えたようで、"あの親子に言い返してるのが君の恋人か。"と白愁先生にからかわれることとなった。

 しばらくすると、襖から杏樹が出て来て、叱りつけられた仲居に寄り添いながら従業員の部屋に向かう姿が見られ、なずなが雅輝達を呼びに来た。

「こちらにどうぞ。」

 なずなも和服を着ているため、いつもよりしなやかな姿勢が見られ、元気良さはあまりないが、白愁先生に着物が良く似合うよと言われ、上機嫌であった。


 
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