無愛想天使
言い合っているのならまだしも黙られては、どうしようもない。荷物を持ち背を向け歩き出した。

どんどん離れて人混みに埋まっていく私を追ってくる気配はない。


『乃々香!』


大きな声がした。

私を呼ぶ声は、誰もが振り返るような本当に大きな声で、自然と離れていた距離に道が出来た。

「忘れものだよ」

と自分の事を指差し、走ってきた。

「忘れものは話さないよ。それに…わざと忘れたの」

意地悪く答えた私の手を握り前を歩き出した。さっきまでの不機嫌さは何処に消えたのか、後ろ姿がやけに嬉しそうだった。



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