俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「杏?」

階段から天使の声が聞こえる。
華ちゃん?
尻尾がピクリと反応し、目の前に来た本人を確認すると一気に気持ちが浮上してきた。

「華ちゃん!」

これでもかというほど、尻尾をブンブン振っているのが分かる。

「ねぇ、これ杏の眼鏡じゃない?下でレンズ外れてフレームも曲がってたわよ」

「ありがとうございます!はぁ。華ちゃんに会えて良かった。少し充電させてください」

華の前に頭を突き出し、撫でてほしいと懇願する。
杏のこの行動の意味も知っている華は眉を歪ませて声を潜めた。
手は、杏の頭の上だ。

「━━━━何があったの?」

少し待ってて。と、杏の所属する営業部のフロアへと入っていき、少しして戻ってきた。

「川北次長に時間もらってきたから。医務室行くわよ。ストッキング伝線してる。替え、あるわよね?コンタクトは?前買ったワンデー予備に1つロッカーに入れときなさいって言ったけど、ある?先に更衣室取りに行きましょう」

有無を言わさず視界の悪い杏の手を取って階段を降りる。何も言わなくても華は気づいてくれる。
それだけで心が満たされるようだった。


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