俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
彼の家に着いて、一緒に降りた。
タクシーが走り去った後をぼんやり見つめながら、同じように立つ小早川君に目を向けると優しい目をしてこちらを見つめていた。

目があって、照れたように微笑みあい差し出された手をとってマンションへ歩き出す。

ゆっくりと、私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
そんなささやかな、だけど優しい気遣いが心に染み込む。

自分のこと。
小早川君のこと。
分からないことばかりだったこの気持ちが『好きだ』と言葉で表してからゆっくりと胸に広がって、どうしようもなくつたえたくなった。

だけど、こんな道の真ん中で言葉にするのは恥ずかしくて。

手を引かれながら、もどかしくて、困ったように彼を見つめてしまう。

エレベーターに乗り込んで、密室になったその空間にフライングぎみに繋いでいた手の腕に絡まるように近付いた。

エレベーターといえどもカメラがある場合もある。でも少しくらい……。

ピタリとくっついた瞬間小早川君の腕に、体に力が入ったのが分かった。

駄目だったのかと不安になって見上げると、困った顔をして、でも優しく反対の手で頭を撫でてくれる。ホッとしてその手に頭を刷り寄せた。

音がして、彼の部屋の階に着いた。
この後の展開に不安がない訳じゃない。
怖くない訳じゃない。

だけど今は早く伝えたかった。




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