俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
手を離して、
小早川君が部屋の鍵を開ける。

今まで一言も話さなかった彼がポツリと言葉を溢した。
私に視線を合わせないまま。


「……杏。本当に分かってる?部屋に入るってこと」


伺うような何処か不安げなその表情が可愛くて。ドアに手を描けたままの腕に再び絡まるようにくっついた。


「……分かってますよ?」

「っ、」

ゆっくりとドアを開けて、二人で中に入った。
絡めた腕はほどかれて、恋人繋ぎに変えられて、靴を脱ぐ間も離されることはなかった。

リビングに入り、明るい電気のもとお互い目を合わせてどうしようもなく恥ずかしくなった。

先に言葉を発したのは小早川君の方だった。

「何か、飲む?」

「っ、コ、コーヒー淹れましょうか?」

「……嫌、いいや。……杏、先にシャワー浴びてきていい?」

「はっ、はいっ。どうぞ」

「適当に寛いどいて」

繋がれた手がほどけて、彼の背中を見送ると一気に緊張が走る。

痛いくらいに心臓が暴れだして、寛ぐどころじゃなかった。

倒れるようにソファーに身を委ね、飛び出してきそうな心臓を押し込むように手で押さえる。

あぁぁぁぁぁ。

苦しすぎる。
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