うっせえよ!
「でもよかったじゃないですか。そのおかげで有名になれたんですから。」
「私は有名になりたくて小説書いてるわけじゃないわよ。」
「じゃあ、何のために書いてるんですか?」
「あんたこそ、なんで編集の仕事なんてしようと思ったわけ?」
「それは、やっぱり本を読むことが好きだからですかね。」
「くだらない。」私は鼻で笑った。
「本を読みたいなら、別に出版社に入らなくたって読めるじゃない。あんたが仕事してるのは生きていくためのお金を稼ぐためじゃない。」
「でも、どうせ働かなきゃいけないなら、自分の好きなことしたいじゃないですか。」
「それがくだらないって言ってんの。」
ビールを飲み干し、おかわりを注文した。愛想のない店員で、返事もしない。頻繁に通っているが、見たことがないところを察すると、新人のアルバイトってところだろう。
「ほら見なさいよ。サイン会や雑誌の対談までやってるのに、あの店員は私が大木りんだってことも知らない。有名って視野の狭い安易な言葉よね。」
藤原は顔を引きつらせていた。この純粋な顔が私は好きだ。どこか憎めなくて、いじめたくなるのだ。