うっせえよ!
「藤原、あんた好きな人いるの?」
唐突に訊きすぎたか、藤原はビールを噴き出した。汚い。
「い、いませんよ、そんなの。」
「そう? なら私と付き合ってみる?」
藤原はさらに顔を引きつらせている。いい。今のこの角度は物凄くいい。
「冗談よ。ばーか。」
「なーんだ、冗談ですか、勘弁してくださいよ、先生。」
藤原は笑って、おしぼりを運んできた不愛想な店員にビールを注文した。店員はやはり返事もせずに行ってしまった。
「先生は恋愛ってガラじゃないですもんね。小説一筋の働く女性って感じですもんね!」
「ふんっ、恋くらいしようと思えばいつでもできるわよ。」
そう強がったが、藤原の言うことは正しかった。作家はただでさえ出会いが少ないのだ。
生きていくための作家としての仕事を続けていくしかない。仕事に依存しないと、生きていけないのだ。