私のいとおしい残念な男達

目の前で両手を広げる和馬に、なんだか照れてしまう


ハグ………よね

前は素直にこの胸の中にいたんだ、なんて


懐かしいシトラスの香りがして、昔と同じようにフワリと優しく抱き込んで……?


きゅゅうぅッーー


「………えっ」


ハグって、こんなに抱きしめられるものだったっけ


けど


「………小夏」

更に背中に回った手に強く引き寄せられる


「か、和馬?」

少し痛い


彼の息がかかる耳元で、低く微かに聞こえた声


『本当は…去年、小夏を連れて行きたかった』

近過ぎて黒木には聞こえない



『………ごめん、俺にそれが出来なくて』



そのまま、ゆっくりと顔を上げた


「ごめんな、小夏………」


「…………っ」


スッ……と、
さっきまでの力任せだった腕が静かに離れていく



「さっ、そろそろ行かないと」

私から離れたその腕に少し押され、和馬は身体を翻して黒木へ視線を移した


「……………」

黒木の肩を叩いて「じゃあ…」と、荷物に手をかけ本当に何もなかったように行ってしまおうとしている



なにそれ………ズルい


ズルいよ和馬、あの時貴方は私だけのものじゃなかったじゃん


「…………こ、なつ?」

私に振り向いた二人が、私を見て同時に眉をひそめる


「…………っ」


せっかく

ちゃんと笑顔で見送ろうと思ってたのに




どうしようも出来ない淋しさが、
止まらなくなるじゃん


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