私のいとおしい残念な男達
          ** 黒木side **



「悪い、ちょっと煙草」


企画書に煮詰まった時は、デスクにいたってコーヒーを飲んだって、たぶん煙草を吸ったってダメだろう


ここ何日かは、いくら頭を捻っても企画なんか出てきやしない


別口の案件がまだ3件進行中だって言うのに、その内の1つはクライアントの都合で全面見直しとか有り得ねぇだろ



「はぁ………くそっ」

煙草をくわえながら自動販売機で、ブラックコーヒーを取り出し
休憩用の長椅子に座り、脚を組み煙草片手にコーヒーを流し込む


「………………」




『私が和馬と一緒にいたっておかしくないでしょ』

おかしくねぇよ、別に…………至って普通にしようとしてるからムカつくんだろ


企画は浮かばないのに、あいつの言った言葉ばかりが浮かんでくる


長椅子に手を着き体制を変え、投げ出した脚を支えに身体を仰け反らせた


「あ、悪い」

つい、周りが見えていなくて、隣で同じ様に休憩しながら談笑していた二人組みに肘がふれた


「ああ、すいません」


然して気にしない様子で、そのまま社内の噂話に華を咲かせている


「知ってるか?制作部の野口課長が経理課の子と不倫してたらしいぜ」


「あれだろ、裏のラブホから出てくるの目撃されたって………」


声のトーンも落とさずに、話したところで全く自分には関わりのない人間だからだろう、
知る限りの情報をお互いに引き出しているみたいだ


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