哭く花
「えっ、先生担任なの!!」
ゆめちゃんは声を荒げながらカバンをその場に放り捨て、
先生に近寄る。
社交的なゆめちゃんは本当にどの先生とも仲がいい。
「そう、僕が今年の担任、よろしくね夢架さん」
先生と話すゆめちゃんの目はキラキラと輝いていて、
顔は興奮して火照っているようだった。
「やーん、先生が担任なら、私数学天才になっちゃうな、」
ゆめちゃんはカバンを拾いつつにこにこ顔で
私に中はいろっ、と声をかけた。
「う、うん!」
廊下に立って、
ほかの生徒が来るのを待っている先生の横を
私はぶつからないように慎重に通った。
ちらりと様子を伺うと、
偶然にも目が合ってしまう。
大きく穏やかな瞳に、私の顔が写る。
「あっ、そのっ」
今まで誰にも感じたことのない感情。
耳が熱い。言葉にならない。
自然と涙が目に溜まるのがわかった。
だめだ、先生を困らせてしまう。
こぼれそうな涙を咄嗟に下を向いて隠した。
「ゆっくりでいいよ、よろしくね、美岬さん」
先生は慌てることも、動じることもせず、
暖かな手を私の背中に当て、そう言った。
ふと顔を上げると、
先生は廊下を職員室の方へと向かって歩いて行ってしまった。
背中に当てられた手のぬくもりが、
静かに消えていくのを感じた。