哭く花
ぼうっとその感覚に身を委ねていると、
教室から心配そうに見つめているゆめちゃんの存在に気がついた。
「美岬、大丈夫?」
「あっ、うん!」
もともと人と話すのが得意でない私は、
高校に入ってからも幼なじみのゆめちゃん以外に友達がおらず、
担任の先生ともろくに話せないようなだめな子で。
ゆめちゃんは私が言葉にならないとき、
パニックで涙を流すことを知っている。
いつもいつも支えてくれるのはゆめちゃんだった。
こぼれかけた涙を袖で拭いて
教室の、いつもと変わらない席に腰を落ち着ける。
「あの先生、名前何?」
私は前の席で鞄の中身を出しているゆめちゃんに声をかけた。
「あーっとね、森本純一郎先生。私たちの授業じゃなかったもんね、数学、わかりやすいってウワサ」
「そう、なんだ」
脳裏に、たった今見つめたばかりの瞳が
じんわりと蘇った。
森本、先生かあ
名前を反芻するだけで、潤い始めた目を
誰にも気づかれないように
隠しながら席についた。