哭く花
先生なのに。
お父さんなのに。
高鳴る胸は耳元まで鼓動を届ける。
言葉が詰まる。耳が熱い。
まるで、
初めてあった時のように。
黙ったまま、言葉を発さない私は、
先生の声が頭の中に響いたまま、
響きの中をもがいて、意味だけを探し続けていた。
そんな私を見ていた、先生の目が泳ぐ。
「…やっぱり」
先生が弱気に呟いてふっと笑う。
ドアを支えていた手が離れて、みしりと音を立てた。
廊下から差す光が、段々細くなっていく。
嫌だ。無かったことにしないで。
心の中で何かが叫んだ。
「し、支度してくるね、先に入ってて」
加減がわからないまま発せられた声はやけに大きく部屋に響く。
余裕なふりをして、足は震えていた。
私は先生に精一杯こわばった笑顔を向けると、
ドアの前に立っていた先生の横を通り抜けて、クローゼットへと向かった。