君の声に溺れる
そもそも笠原くんの気持ちも聞いたわけではない。
ただ、笠原くんが好きだと言っていた甘いものを、つまりチョコをあげたらどんな風に喜んでくれるんだろうなんて、そんなことを考えてしまった。
あの日見たとびきりの笑顔を思い出すたびに胸が甘く痺れて、またあの顔が見られたらと、そんなことばかり考えてしまう。
「あの、さ…」
「んー?」
ソファーにゴロンと寝ころんだ態勢で弟が首だけをこちらに向けてきた。
「クラスに一人はいるじゃん、無口な子とか」
「いるか?」
「私のクラスにはいるのっ」
「あーはいはい、で?」
「そういう人と仲良くなるにはどうすればいいと思う?」
「何それ、姉ちゃんの好きな人無口なのかよ」
「い、いいから答えてよ!」
弟に相談するっていうのもあんまり気が進まなかったけれど、こう見えて学校では男女両方に結構好かれているらしい。家では小生意気な弟だけど。
笠原くんと今より仲を深める為には仕方ないのだ。
自分をどうにか納得させて、弟の答えを待つ。
けれど我が弟の出した答えは想像よりずっと厳しいものだった。
「姉ちゃんそれ諦めた方がいいかもよ」
「え、何で!?」
「だって姉ちゃん基本的にすげえうるさいし」
グサッと心臓に刺さるお言葉だった。
「そ、そんなこと、ないよ……。静かにしようと思えばできるし……」
「嘘だね。姉ちゃんが静かなのは寝てる時だけ。テレビ見ててもキャーキャーうるさいし、息をするように喋る人種だから」
「……っ」
一言も反論ができない。小さい頃から落ち着きがないとよく言われていたし、何より自分でも笠原くんのように静かでいる想像がつかないからだ。
「まあ、姉ちゃんの淡い初恋もチョコと共に散ったな、ドンマイ」
「口元が思いっきり笑ってますけど」
なんて意地の悪い弟だろうか。姉の初恋が散るかもしれないというのに慰めの言葉の一つもないとは何事か。
「ま、その時は俺が残ったチョコ食ってやるからさ。頑張ってみれば?」
「……はい」
これだから、いくら生意気でも弟が嫌いになれないのだ。