龍瞳ーその瞳に映るもの
感覚の距離ならばもうすぐ近くまで
来ているはず。

人の気配に神経を集中させる。
足音も衣摺れの音も息つかいも聞こえない。

意を決してもう一度、顔を少しずつ
出して男の人の居場所を確認する。

気が狂いそうな程の緊張感。
男の人はさっきいた場所にまだいた。

辺りをもう一度見回し駐車場を後にした。

「ふぅぅぅぅ」長いため息が出た。

とりあえずは危険回避。

あとは誰にも見つからずにここを出る。


…ここを出てどこに行くの?
私にはもう帰る場所はなかったんだ。

絶望に飲み込まれそうになるのを
唇を噛んだ痛みで誤魔化す。

とにかく、生き延びること。

追いかけてくるあの人達にも
怒り狂った男の人にも見つかったら
タダじゃすまない。

この街から脱出することだけを考えてる。

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