龍瞳ーその瞳に映るもの
「そんな正義はない。
俺たちにあるのは利益と信念だけだ」

それにな、とアズは髪を梳く手を止めた。

「俺はまだ人を殺しちゃいない」

ホテルの事件の話をした時、
否定も肯定もしなかった。

「被害者に会いに行った時にはすでに
殺されていた。
俺たち的には先を越されたという事だ。
そんな時、お前に出くわした」

あの夜、何をしてると言ったアズは殺気立っていた。

「あの時は本気でお前を殺すか悩んだ」

目撃者になる私は邪魔者でしかない。

「時間がありゃ殺してたかもな」

冗談には聞こえず今さらながら
背中が寒くなる。

「アズは人を殺すの?」

それだけは聞いておきたい。

「…あぁ、それしかないなら」

その続きは聞かなくてもわかる。

龍瞳の仲間に危害が及ぶなら
それも厭わないという覚悟。
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