イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「あ……の……、流星、公衆の面前で、こういうのは……その……ダメなんじゃないかと」

「俺とこういうことするの、嫌なんだ?」

「それは……」

確かに、ちょっと前までの私だったら嫌だっただろう。何しろ、男性すべてが嫌だったのだから。
でも今は、嫌だとか怖いとかそういう感情ではないと思う。
だって、怯えて固まっていたあの頃と違って、身体が自由に動くのだから、こうしているのはきっと私の意志だということなのだろう。
それでも彼を跳ねのけない自分自身が不思議だった。

どうして私は、この抱擁を受け入れているのだろう?
何故、離れようとしない?
私は、離れたくないのだろうか?

答えが出せないまま、時間だけが過ぎた。
五秒、十秒が、五分、十分にも感じる。
やがて、流星は私の身体をそっと解放した。

「あなたは、やはり何も言ってくれないんだね」

何かを諦めたような、物憂げな瞳。
「困らせてすまなかった」そう告げて、流星は背を向ける。

「あの、りゅう――」


呼び止めようとしたとき、背後から聞き覚えのある声が響いた。

「あーーー! こんなところにいた!
一体どこ行ってたんですか! 探したんですよ!?」

駆け寄ってくる一組のカップル。市ヶ谷くんと青山さんだった。
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