イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「分かっているのですか。自分の言っていることを」
氷川は、資料をパンと叩きつけて、まるで論外だとでも言うように私を睨みつけた。
「二つの意を汲んでひとつのものを創り上げることの、大変さを。異なった主張をする双方を納得させる、難しさを」

「そこは、私たちの腕の見せ所でしょう」

「そんな理想論でどうにかなるものではないのですよ」

少しだけ、氷川の口調が荒立った。冷静な彼にしては珍しいことだ。
そうまでして、私の企画に反対だということなのか。

「あなただって、この手の企画の失敗例を、幾度となく見てきたでしょう。
『ジュエルコスメ』をたてつつ、『星宝Lilia』の要望にも応えなくてはならない。
だいたい、『星宝Lilia』が占める我が社の売り上げがどの程度か、知っていますか?
私たちは『星宝Lilia』を優先しなければならない」

つまり氷川の言いたいことはこうだ。
『星宝Lilia』から無茶な要望が入った場合――たとえその内容が『ジュエルコスメ』の意向を踏みにじるものだったとしても、私たちはその要望に従わなければならない。
『ジュエルコスメ』よりも『星宝Lilia』の方がお得意様だということだ。
優先順位は『星宝Lilia』にある。

それを調整するのが私たちの仕事なのだけれど、簡単にできることではない。
何より『星宝Lilia』自身が私たちの足元を見てくるだろう。
私たちがNOと言えないことを、彼らは知っている。

分かっているのだ。そんなことは。
けれど『難しいから』という理由で避け続けていたら、新しいモノなんて生み出せない。
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