イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「……いや、違うんだよ、市ヶ谷くん、えと、これにはいろいろと訳が」

なんだか浮気を見つけられた亭主みたいにわたわたと弁解する私。
市ヶ谷くんの不信感たっぷりの瞳が私を真っ白にさせる。

「今の会話を聞いて私たちが付き合っていると思ったのなら、あなたの状況察知能力は壊滅的です」

おろおろとする私を遮って氷川が冷静に言い放った。

「いや、でも、同じベッドで寝るとか――」

「あれは事故です」

「どんな事故があればそんな状況になるっていうんですか」

「大人には色々とあるんです」

「大人って……俺のこと、馬鹿にしてます?」

刺々しく言い放つ市ヶ谷くん、その矛先がこちらを向く。

「朱石先輩と氷川さんって犬猿の仲だと思ってたのに。ひょっとして今まで二人が散々バトってたのって、痴話喧嘩だったんですか?」

「そんな訳ないでしょ!? ガチ喧嘩だよ!」

「氷川さんが何かと先輩に突っかかってくるから、すごいムカついてたんですけど、腹が立ってるのって俺だけだったんですかね」

「そんなことないよ! 私だって、氷川のことなんか大嫌いで――」

咄嗟に口をついて出たものの本人を前にしていることに気が付き、しまったと思うがもう遅い。
恐る恐る氷川を覗き込むと、彼は神経質そうに片眉をぴくりと上げた。

「――くだらない」

苛立たしげに一言言い放ち、さっさとその場を立ち去る氷川。
残された私たちの間に、重苦しい沈黙が下りる。
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