イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「一体どこで油を売っていたんですか。会議室からここまで一分とかからないでしょうに、どうしたら三十分も使い切れるんです?」

自分のデスクに戻った瞬間、氷川が八つ当たりとも思えるような言い草で食ってかかってきた。

ああ……もう本当に、文句ばっかり……

市ヶ谷くんとのやり取りに五分。精神を立て直すのに十分。途中トイレに行って五分。休憩室ですれ違った同僚と話し込んで十分。
という内訳なのだが、わざわざ口にするのも面倒くさいし、そんな説明氷川も求めていないだろう。

思わず、はぁ……とか細いため息が漏れた。
それを見た氷川はいっそう腹立たし気に眼鏡を光らせる。

「あなたがもたもたしている間にクライアントからクレームの電話が入りました。急場しのぎの応対はしておきましたが、すぐに折り返し処理に当たってください」

「って、ええ!?――クレームって誰から!?」

「皆乃川物産です。まったく。何をやらかしたんですかあなたは」

氷川が一枚のメモ放り投げた。
慌ててキャッチしたそのメモには、クライアントの名前、クレームの内容等が記されている。

「了解、手間かけてごめん! すぐ対応する!」

一気に現実に引き戻され、頭の中が高速処理モードに切り替わる。
氷川のことも、市ヶ谷くんのことも、頭の片隅に追いやった。
今やるべきことは、目の前の仕事!

デスクの上の資料の束から皆乃川物産に関連する箇所を抜き取って、クレームの内容にあたりを付ける。
受話器を肩に挟んで電話番号を押しながら、氷川のメモに目を通して、クレームにどう対応すれば良いかを考え――

ふと、メモの裏の文字が透けていることに気付いて、私は手を止めた。

裏にも何か書いてある……?
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