イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「あー、びっくりした」

額を拭う私を、冷ややかな目で見つめる流星。

「いやいや、びっくりしたのは俺だから。急に走り出すんだもの」

「だって、今、ゾンビが――」

言いかけたそのとき。
天井から何かが降ってきた。
周囲に赤い糸のような閃光が張り巡らされ、それに射貫かれて照らしだされたのは、カラスだった。
羽がもげて血がしたたり、真っ赤な目をひんむいている。死体だった。

「きゃーーーーーーー!!!!!!」

再び私は流星の手を取って走りだした。

「ちょ、待っ、落ち着い――」

流星のクレームが聞こえた気がするが、それどころじゃない。
しばらく走った先は、拷問部屋で、いっそう恐怖心が増した。
ギロチンがガチャンと音をたて、骸骨の生首が転げ落ちる。
蓋の裏に無数の針がついた棺桶が、バタンと閉まり、気色の悪い肉が裂ける音と悲鳴がこだまする。
ゾンビがナタを振り回し、黒猫が裁断されていく――地獄のような情景。

「やだ……もうやだ……」

私は流星の背中に目を押し当てて、何も見えないようにした。

「分かった分かった。じゃあ目をつぶったままでいいから、歩くよ」

そう言って流星は、私の肩にそっと手を回し、自身の懐に招いた。
ゆっくりと私の身体を前に先導する。

「ここ段差。気をつけて。ほら、もうすぐ出口だ」

瞼の上から真っ白な光が差して、目を開けた。
そこはもう出口の外だった。
暗い場所にいた分、余計に太陽が眩しく感じられる。

力が抜けた私は、その場にへたりとしゃがみ込んだ。
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