イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「疲れた……」

「ははは。そこまで苦手だったとは」

私の横にしゃがみ込み目線の高さを合わせながら、流星が軽口を叩く。

「だから嫌だって言ったじゃない!」

「こんなに怖がるとは思わなかったんだもの。それにしても――」

流星は私の手を取って助け起こしながら、フフ、と含み笑いを浮かべる。

「あなたって本当に、臆病というか、小心者というか……。
俺が触れるといつも震えて固まっちゃうし、さっきだって、市ヶ谷くんに無理やり手を掴まれて、怯えていたでしょう。
普段はバリバリ仕事をこなして、『鉄の女』なんて呼ばれているくせに、これはある種の詐欺だね」

詐欺とは。流星にだけは言われたくない。っていうかそれ以上に『鉄の女』って何なんだ。
私たちは本来の目的地『ラブ・キャッスル』の方へ歩みを進めながら話を続ける。

「……『鉄の女』って、私、そんな呼ばれ方されているの?」

「知らなかった? 女傑とか、どんなに揺さぶりをかけても揺るがない女とか、言い寄ってきた男性社員を五十人振ったとか」

「……そもそも、男性社員に言い寄られたことなんてないんだけど」

「そりゃあそんな噂が流れていたら、怖くて誰も言い寄れないだろうね」

流星はカラカラと無責任に笑う。
冗談じゃない、一体誰がそんな噂を流したんだ。
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