『ココロ彩る恋』を貴方と……
「……ごめん。悪い冗談言った」
視線を逸らせた人は、そう言って私と距離を置く。
作品に向かっていた姿を翻し、作業台から離れた。
「体の調子は?動いても大丈夫?」
背中を見せながら話す人に、胸がぎゅっと掴まれる。
「平気です。今からアパートに帰ろうかと思って、声をかけにきました」
本当の目的を口にしながら、行き場の無い虚しさを感じる。
「…そう。気をつけて」
泊まるように言っていた人も止めない。
悪い冗談を言ってしまったことを反省しているのか、それとも早く私を作品から離したいだけなのか。
「お邪魔しました」
言いようの無い寂しさを感じて頭を下げた。彼と彩さんの間には、入り口が見つからない。
頭を上げても声を返してもこない人の背中を睨み、ぎゅっと唇を噛み締める。
これ以上ここに居ても悲しくなるだけだと判断して、ゆっくりと体を動かした。
「あ……満仲さん」
背中を向けたと同時に声が聞こえて振り返った。
手に刷毛を持った人がこっちを向いて、明るい口調で言った。
「キッチンにある物食べて帰って。あれなら君も食べれると思う」
「え……?」
「味は保証できないけど」
少しだけ持ち上がった唇の端を見つめ、信じられないように瞬きを繰り返した。
「食器は洗わなくてもいいから。そのままにして帰って」