『ココロ彩る恋』を貴方と……
自分が作って出した物だけは食べた方がいいと言うだけで、後は何もやらせてはくれなかったし、強制もされなかった。


(だけど、掃除と卵の割り方だけは教えてくれたよね……)


歳をとっていく祖父の力になりたいと言いだしたのがきっかけだった。

私が高校生になった頃の祖父は、持病の糖尿病と戦う日々を送っていた。

足の指が壊死しかけて切断を免れない状態にまで悪化していた。

辛そうに仕事をしている祖父の助けになりたいと思い、申し出たんだ。



『料理では役に立てないけど、掃除ならできるから教えて!』


少しでも長く祖父と一緒に暮らしたかった。足を切断したら、病院に入らないといけなくなる。


(一人になりたくない!お爺ちゃんと一緒にいたい!)


美味しい物を食べる度に悲しい気持ちが芽生えだした。


美味しいと思えば思う程、悲しくなっていったーーー。



「どうかした?」


隣に座っている人が聞いてきた。

ぼんやりとしたまま食べずにいて、皿の中ばかりを覗き込んでいたせいだ。


「…いえ、何でもないです。あっ、お替わりはいいですか?」


トマト以外の旨味も何もないリゾット。本来はお替わりなんて勧めたくないけど。


「もういいよ。俺は自分でよそって食べた。残りは君が食べれるだけ食べていいから」


ご馳走さま…と手を合わせ、先に椅子から立ち上がる。


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