『ココロ彩る恋』を貴方と……
「そう。ごめんね、お爺ちゃんとのことを話しちゃったの。育った家の障子を真似したんだろうって」


「それを聞いて兵藤さんは何か言ってましたか?」


「ううん、何も。そうですか…ってだけ」


(なんだ…そうか……)


何も感想とかなかったんだ…と思う時点で、当然だよね…と思い直す。


「あっ、でも、一つだけ頼まれたことがあったわ」


「兵藤さんにですか?」


「ううん、ほら何てったっけ。あの広報部長の人」


「河井さん?」


「そうそう。その人に伝言しておいて欲しいと言われたのよ。渡しておいたチケット、有効活用してね…と」


ギクッと背中が伸びる。私の表情が固まるのを見て、「チケットって何のこと?」と尋ねる。


「…兵藤さんの個展のチケットなんです。招待券らしくて、無料らしいんですけど……」


「あらっ、いいじゃない。折角だから行ってきなさいよ!」


奥さんは目を輝かせた。


「だけど、私は版画なんてよくわからないし…」


断る理由を頭の中であれこれと練ろうとしていた。そんな私に腕を巻き付け、奥さんは「行った方がいいわ!」と勧めた。


「紫音ちゃんが観ても素敵だと思うわよ。どの作品にも味があって本当に見事なんだから。

私も主人と早々に観に行ったんだけど、どれも買いたくなるくらいに綺麗だったの!」


「私が兵藤さんの家で見た作品は、どれも暗い感じのものばかりでしたけど……」


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