『ココロ彩る恋』を貴方と……
真っ黒い色が明るいブルーを押さえつけていたり、群青色の闇が拡がってばかりいた。


「そりゃそういう作品もあるわよ。でもね、それが後半になるに連れて変化していくの。

暗いトンネルを抜けていくように、仄かな光が差し込んできてね、ほっこりすると言うか、優しい気持ちになれると言うか……。


あーもう!とにかく行ってご覧なさい!絶対に感動して涙が溢れるはずよ!」


「えっ…でも……」


「お爺ちゃんへの冥土話が増えると思って行ってごらん!絶対に損はないから!」


大袈裟に勧める姿を見ながら、どうしてそんなにも行かせたがるのだろうかと考えた。

私が疑問をぶつける間も与えず、奥さんはさっさと買い物を済ませて帰った方がいい…と言いだした。



(自分が呼び止めたくせに…)


離れて行く背中を見ながら奥さんの言葉が頭から離れない。



『感動して涙が溢れるはずよ!』


あの暗い絵が変化していくというのはどういう意味なのか。

感動するというのはどうしてだろう。


『お爺ちゃんへの冥土話が増えると思って行ってごらん!』


お爺ちゃんっ子だった私への殺し文句を言って逃げた。

そう言えば間違いなく、私が足を運ぶだろうと思っているんだ。




(……どうしよう)


おでん材料を手にしながら、ザワザワと胸が掻き立てられる。


気になって仕様がない思いに蓋をして、急ぎ足で雇い主の家へ帰ったーーー。


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