『ココロ彩る恋』を貴方と……
廊下の縁側を指差して聞いた。
振り返った兵藤さんは、遠巻きに椅子を眺めている。



「……図案」


「ずあん?」


「絵のバランスとか構成とか。何を描こうかな…とか」


「あー、それでいつもぼんやりとしてたんですか。なぁんだ〜〜」


私はてっきり亡くなった彩さんのことを思ってたのかと信じていた。


「庭には季節感があるだろう。それを眺めているといい図案が浮かぶんだ」


この間の個展で描かれていた花や木や草。それはあの椅子から見えていた世界だった。


(本当に闇の中から見えた世界を描いてたのね〜〜)


個展のタイトルを思い出しながら、なるほど…と納得がいく。


「ところで、何か作って欲しいんだけど」


「あっ、はい。何が食べたいですか?」


兵藤さんを振り返って聞いた。
私を見下ろしている目が泳ぎ、口元を隠すようにした彼の顔が赤い。


「……?」


首を傾げると、彼が小さく呟いた。


「……任せる」


「…あ、はい。じゃあ適当に材料見て作ります」


赤くなった理由がわからず、そう言って側を離れようとした。



「あの…満仲さん」


呼び止められて向き直ると、赤みが残った顔で兵藤さんがこう言った。


「今夜話があるから時間作ってくれると助かる」


ドキッとする様な目線を向けられ、狼狽えそうになるのを堪えた。


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