『ココロ彩る恋』を貴方と……
背中に添えられていた腕が前へと回ってきて、そっ…と胸元をさすった。


「ちょ…ちょっと…」


急に怖くなってくる。
胸を掴まれたことはあっても、こんなふうに触られたことはない。

閉じてた目を開けてみると、驚くような顔と出くわす。


「…ごめんなさい。急に声を上げて……」


彼の気持ちを削いではいけない。
それはちゃんとわかっているんだけど……


大好きな人の目を見ていられなくなって隠した。
自分の腕を目の上に置いて、何も見ないようにして呟く。



「緊張し過ぎて怖い…」


兵藤さんを好きだけど、やっぱりどうしても臆病になる。

体に触れられると母の暴力を思い出す。

顔をあまり狙わず、お腹や胸ばかりを蹴ったり叩いたりされたーーー。



「紫音…」


苦しそうな声を聞いても、腕は顔から離れていかない。

重そうな息を吐いて彼が離れていってくれるまで、そのままのポーズをとり続けた。



「ーー今夜は止そう」


そう言うと彼は私のことを起こして抱きしめる。


「紫音がこの家にいれば俺はいいんだから」


優しい言い方に涙の粒が溢れてしまう。
彼は母じゃないのに、どうしてこんなにビクつく必要があるだろう。



「ごめんなさい…」


謝る以外の方法はない。
彼をその気にさせておいて、待てと言ったのは自分だから。


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