タタリアン
 鏨山の巨大な結晶の側に立った
恭介と太志。
 ふたりが結晶に手をあてても崩
れず傷もつかなかった。
 太志が分析した。
「空気にふれて時間がたつと人間
の手にも影響されなくなるんだ
な」
 恭介がつぶやいた。
「フトッチャン。なんで俺達の体
には異常が起きないんだろう?」
 太志が冷静に、
「僕達と一緒にいた作業員にも体
の異常はなかった。英子さんたち
の作業と僕達の作業の違いはそん
なにない。ただ、僕達は岩を取り
除くことから始めたから、ゆっく
りと結晶に近づいたことで免疫の
ようなものができたのかも?」
「じゃ、これにはウィルスのよう
なものがついてるってこと?」
「それか放射能のようなものかも
ね」
 太志がいきなり結晶をなめた。
 驚く恭介にニヤッと笑う太志。
 恭介も真似をしてなめてみた。
 するとふたりとも同時に苦い顔
をした。
 怒った恭介が、
「苦いじゃない」
「だって僕だけじゃつまんないも
ん」
「道連れにするなよ」
「だけど毒じゃないみたいだね」
「味だけで判断するな」
「あ!」
 太志が驚いて見ている方に恭介
も目を向けると、防護服を着た集
団が近づいて来る。
 防護服のひとりが恭介と太志に
英語で話しかけた。
 太志が英語の苦手な恭介に、
「どうやらアメリカの軍隊が乗り
込んできたみたいだよ。ここから
出て行けだって」
 恭介は断れそうにない状況にし
かたなく立ち退いた。
 太志も恭介の後について行っ
た。
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