甘い恋じゃなかった。
「で?」
「で?って」
「俺が卑怯だろうがなんだろうが、君には何の関係もないと思うけど?」
ぐ、と牛奥が一瞬言葉に詰まった。
あ、怒ってんな。コイツ。
「…関係あります。
俺、こないだ告白したんです、小鳥遊に」
「…あぁそう」
「俺小鳥遊のことが好きなんです。
だから、色々ゴチャゴチャ言いましたけど…つまり俺、小鳥遊と桐原さんが同居してるの嫌なんです、すごく」
…こんなに堂々と俺に気持ちをぶっちゃけられるくせに、何で今までウジウジしてたんだ、コイツ。
「それを何で俺に言う?」
「…え?」
「アイツに言えばいいだろ」
そう言って、俺はアイスコーヒーを用意しようと席を立った。すると、なぜか一緒に牛奥も席を立つ。
「小鳥遊のこと弄ぶなって言ってます」
「…は?」
「小鳥遊は…死ぬほど鈍いんで気付いてないですけど、あなたに惹かれてる」
…俺に…惹かれてる?アイツが?
「…君何言ってんの?」
「…まさかアナタ、本当に気付いてないんですか?自分に向けられている視線に」
…俺に向けられている視線…?
思い出そうとすると、なぜかこないだの、頰を赤く染めたアイツの横顔が浮かぶ。
そんでその頰を染めていた相手は、俺じゃない。今俺の目の前で謎なことを口走っているコイツだ。