甘い恋じゃなかった。
お湯を沸かして、先日買ったばかりの少し高級な紅茶を淹れる。
そして箱から取り出したモンブランをお皿に一つづつ置いて、並べた。
茶色いマロンクリームの頂上にドデンと鎮座するのは、大きな和平栗。
「いい栗使ってますね〜」
「お前食材のことなんか分かんねぇだろ」
「失礼な!これが明らかにいい栗だってことくらいは分かりますよ(たぶん)!」
まぁプロではないので詳しいことは全然分からないですけど!
私は鼻息荒くスプーンを持つと、マロンクリームを一口すくって口に運んだ。
濃厚で優しい味のマロンクリームが口いっぱいに広がる。
「うーん…秋気分!!!」
「なんだその感想は」
横からチャチャを入れつつ桐原さんもモンブランを一口食べる。
「…もう少しリキュールを足しても良いかもな」
「そうですか?私はこの優しい味好きですけどね!」
「…あっそ。お前下の方まで食えよ」
「はい!いただきます!!」
気合いを入れてスプーンを持ち直し、今度は更に下の方まで食べ進める。
真っ白な生クリームの下に栗のペースト、そして一番底には
「…ビスケット?」
ほんのりオレンジの味がする。