甘い恋じゃなかった。
ずどーん、と落ち込む私を見て、桐原さんがため息と共に、ス、と自分の皿を私の前に滑らした。
桐原さんのモンブランは一口食べてあるだけだ。
「やるよ」
「えぇ!?いいんですか!?」
「俺は店で飽きるほど食ったし」
「やったー!いただきます!!」
満面の笑みでさっそくスプーンを持ち直した私に、桐原さんがフ、と意味ありげな笑みを浮かべる。
「また俺と間接キスになっちゃうな?」
「なっ…いえ、いいんです!
私も大人の女性ですし!?そんなガキみたいなこといちいち気にしないので!!」
また私をからかって…!
腹立ちまぎれに、だけどやはりモンブランにまたありつけたのが嬉しくて、満面の笑みでモンブランを頬張る私に、
「どこが大人の女…」
桐原さんがボソッと呟いた。