甘い恋じゃなかった。




ずどーん、と落ち込む私を見て、桐原さんがため息と共に、ス、と自分の皿を私の前に滑らした。
桐原さんのモンブランは一口食べてあるだけだ。



「やるよ」


「えぇ!?いいんですか!?」


「俺は店で飽きるほど食ったし」


「やったー!いただきます!!」




満面の笑みでさっそくスプーンを持ち直した私に、桐原さんがフ、と意味ありげな笑みを浮かべる。



「また俺と間接キスになっちゃうな?」


「なっ…いえ、いいんです!
私も大人の女性ですし!?そんなガキみたいなこといちいち気にしないので!!」



また私をからかって…!



腹立ちまぎれに、だけどやはりモンブランにまたありつけたのが嬉しくて、満面の笑みでモンブランを頬張る私に、



「どこが大人の女…」



桐原さんがボソッと呟いた。




< 238 / 381 >

この作品をシェア

pagetop