甘い恋じゃなかった。
眉をひそめて立ち尽くす私に、店長が能天気な笑顔で駆け寄ってきた。
「明里ちゃんいらっしゃい!難しい顔してどうしたの?」
「…いえ、別に」
「…あぁ~」
私の視線の先を追い、納得したように頷く店長。
「もしかして、ジェラシー?」
「…はぁ?」
どうしよう。
ついにこのふざけた青メガネの言っていることが全然分からない。
「それより、桐原さんは…いつも通りですか?」
「え?うん。見ての通り、いつも通りイケメンでモテモテだよ?
あ、そうだ明里ちゃんに相談しようと思ってたんだけど、ケーキ一個につきキララくんとハグ一回かキララくんと…って明里ちゃん?」
店長は一先ず無視して、私は桐原さんに近づいた。
くう…女子高生のミニスカから見える生足が若い…!なんてオッサンみたいなことを思ってしまう。
「桐原さん」
女子高生のキャッキャした声に負けないよう低めの声で彼を呼ぶと、桐原さんがチラ、と視線だけ私に向けた。と同時に女子高生も一斉に私の方を振り返る。
「…何」
桐原さんの声も負けじと、低い。
「あの、何で急に出ていったんですか?」
単刀直入に聞いた。変な回り道は面倒くさい。
桐原さんは答えない。かわりに、周囲の女子高生がざわめきだす。
「…え?何この人、彼女?」
「そんなわけないじゃーん、キララ王子の彼女はもっと知的美人系に決まってるでしょ?」
くっ…悪かったな、バカ系凡人で!!