甘い恋じゃなかった。
女子高生の心ない言葉に傷つく私。大人は繊細なんだぞコノヤロウ。
そして桐原さんは相変わらず黙ったままだし。仕方なく質問を変えることにする。
「じゃぁ、あのお金は何なんですか?」
「…別に」
お、今度は答えてくれるようだ。
「今までの宿代と食費、その他諸々」
「…あんな大金、何で持ってたんですか?」
桐原さんは前言っていた。キリッとカッコつけた顔で“弟子の分際で給料貰うなんておこがましい”と。
「師匠が…無理やり渡してくるんだよ、いつも」
「いつもって…いつから貰ってたんですか!?お金あったんじゃないですか!」
「うっせーなー、だから金やっただろうが」
「ちょ、何でそんなに上から目線なんですか!?いい大人がただ宿ただ飯って…」
「だから!」
私の声を遮るように、桐原さんが声を荒げる。
「出てってやっただろうが、お前がずっと望んでたことだろ?」