人事部の女神さまの憂い

なんとか約束の時間に退社して地下に降りると、柏木さんは電話で話中。

仕事の電話なのか

「わかってる。けど、そこは絶対に変えない。それを調整するのがお前の仕事だろ」

と強いトーン。いらだった柏木さんを見るのは初めてで、ちょっとびっくりしたものの、仕事に真剣なところも、かっこいいなーと完全に色ぼけた目で見とれてしまった。

電話を終えた柏木さんは少し離れたところにいる私に気付くと

「ごめん。待たせた?」

さっきから一転柔らかい声をだす。

そして、近寄ってきて

「ゆりちゃん、久しぶり」と頭をなでる。


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