人事部の女神さまの憂い

「柏木さん・・・」

目に涙が浮かんで、それがこぼれにように必死に耐えていると

「そんな顔してると、キスしたくなるだろ」

乱暴に片手でほっぺをギュっとつままれた。柏木さんは、ごつっとしたいかにも男の人の手だけど、いつも私に触れるときは優しかった。

だから、柏木さんとは終わりなんだなって、この触れ方でようやく実感が湧いた。そしたら、もう涙を止められなかった。ほらっとおしぼりを渡されて、涙をぬぐってくれない距離感にもまた淋しくなっていたら

「俺さ、しばらく上海拠点にするんだ」

涙を拭きながら話しはじめた柏木さんを見ると

「都市の再開発の案件がとれてさ。海外展開はずっと夢だったのもあって、まずその1歩って感じかな。今すごいワクワクしてる。だから、ゆりちゃんのことかまってる暇ないんだよねー」

子どもみたいなワクワクした顔から、ちょっとイタズラ気な表情が覗いてる。

私に明確な言葉を言わせないつもりなんだ。

自然体なこの人の優しさには、かなわない。

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