人事部の女神さまの憂い

「高校の頃初めて付き合った人が、寒いねって、手つないでぽけっとに入れてくれてたんですよ。それが嬉しくて、いつも手袋してなかったんですけど、それ以来なんとなく手袋ってしないんですよね」

「うわー、アラサーなのになんか発言がイタイね」

しかめっ面でそう言ってくるので

「気分は女子高生ですから」と言ってやった。

すると、そういえばそうだったな、とケラケラ笑いながら

「でも遅い思春期はおわったんじゃないの?」

と聞いてくる。そういえば、最初の頃から散々相談に乗ってもらってたなと思い返して

「はい。色々とご心配おかけしました」

立ち止まって敬礼のようなポーズをとると

「すっきりしてんなー」

手袋のままで頭をぐしゃぐしゃされ、静電気で髪がすごいことになっている。やめてくださいよ、とその手から逃げようとしていると

「でもさ、本当によかったの?あいつ結構マジだったんじゃないの?」

一転、まじめな声を出す藤木さん。ほんと、この人はなんでもお見通しなんだなと感心しながら

「私が思ってたよりもちゃんと考えてくれてたみたいです。あのまま逃げずに、ちゃんと向き合って話せてよかったです」

と言うと

「だったら何で終わらしたの?」

さらに深いところまで突っ込んでくる。
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