人事部の女神さまの憂い


「いえ、建築家ってのは知ってたんですが・・・。弟が事務所でバイトさせてもらってるんです」

答えながらも、そんなすごい人だったんだ、言ってよ巧―と心の中で毒づいていた。

「そうなんだ。弟、まだ学生だっけ?あの事務所でバイトとか、優秀ってことだね。でも、なんかそれにしちゃニシユリも親し気だね」

「えっ、あっ。この前たまたま弟とご飯食べてたら一緒になって。ついでにご馳走になったんですよ」

そう言いながら、


お礼を言うのを忘れていたことに気付いたが


そう、それだけ――――――

自分には関係ない人だ――――――



あの日のキスを忘れるように自分に言い聞かせていた。



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