くれなゐ症候群
「そんなこと・・・」

ない、と言いたくて、言葉が障害物にでも引っかかったように、出てこない。


そもそも、どうして自分は彼と見知らぬ町の公園のベンチに、こうして座っているんだろう。


「かわいー手、ちいさくて白くて、」


思わず握りこんで引っ込めようとする手を、逆に和也に両手でつかまえられた。

手のひらが広げられ、指をなぞられる。


「手ぇ可愛いけどさ、くちびるも可愛い。キスしたくなっちゃう」


反射的に、口元がきゅっとひきしまる。
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