くれなゐ症候群
どの季節も、温もりと懐かしさに彩られている。



幼かった奈緒には、父を喪った悲しみよりも、その後の環境の変化がこたえた。


橙色の光に包まれていたような生活から、移ったさきは、廃屋のようになっていた母の生家だった。


奈緒の目には町も家も人も、すべてが灰色で生気に乏しく、寒々しく映った。

そして、それはまぎれもない真実だった。


パレットのすべての絵の具をどろどろに溶かし込んだような、濁った川が横たわる、ゴミの町。



奈緒は小学一年生にして、転校生としてそこに越した。
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