くれなゐ症候群
退廃的な雰囲気をまとう、美しい人だ。

奈緒たちより年上だろうけれど、年齢はよく分からない。


「あ、あたしたち『chic』を見にきたんですぅ」

少し間をおいて、千香がこたえる。
おもねる口調になってしまうのは、相手の存在感に気圧されたからだろう。


「『chic』か。あんまぱっとしないねー」

「そうですかぁ」

「普段はねー、今日は別」
女性が形の良いくちびるのはしをつり上げる。

「サポートギタリストがいいから」

「サポートギターって・・・修二くんのことですか?」

千香が思わず大きな声を出す。
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