くれなゐ症候群
「やっぱ知ってんだー、翔一のこと」


「ねえねえ、修二くんのお兄さんがどうかしたの?
なんかあったの?」
千香がじれたように、口をはさんでくる。


背後から、ただの喚き声にしか聞こえないバンドの演奏がかぶさってくる。

しぜん、顔を寄せるようにしてしゃべることになる。


「修二の兄貴の翔一ってねー、失踪したの。
今から五年前、15歳のとき」


『シッソウ」という言葉の意味がうまく飲み込めなかったのか、千香が戸惑う表情で沈黙する。
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