夢で会いたい
「今日は楽しかったです!ありがとうございました!」
中島さんが心からの言葉とともに、トモ君の手をがっしりと握る。
「こちらこそ。ありがとうございました」
トモ君も楽しかったようで、それはお互いによかったのだと思う。
「北村さんも、ありがとうございました」
はいはい、私は完全についでね。
「私も楽しかったです」
小雪と話せたことは楽しかったから嘘ではない。
結局連絡先を交換することもなく、中島さんは帰っていった。
「えーっと、芽実ちゃん、ごめんね」
結果として、私のお見合い(?)をぶち壊したという自覚があるのだろう。
「別にいいよ。中島さんすっごく楽しそうだったし。あんたがいなくても私とは合わなかったと思うよ。私よりも、小雪と瀬尾君。こんなことに付き合わせちゃってごめんね」
「俺は構わないよ。面白かったし」
小雪もにこにことうなずいている。
私の方はダメだったけど、仲の良いこの人たちを見られてよかったな。
時間を確認すると、もうそろそろ行かないと電車に乗り遅れるところだ。
「おっと、遅れちゃう。瀬尾君、小雪どうもありがとう!またね」
走り出そうとする私の腕を何者かが掴んだ。
「芽実ちゃん、送っていくから一緒に帰ろう」
やはりこいつか。
「なんであんたと帰らなきゃいけないのよ」
「僕は車で来たんだ。同じ場所から同じ辺りに帰るんだから、別々の方が不自然でしょう?」
「仲良くなければ別々で当たり前じゃない?」
「電車代浮くよ?チケット取っちゃった?」
「まだだけど」
確かに片道一万円弱の交通費が浮くのはフリーターとしてはありがたい。
またしてもこいつは札束で頬を叩くような真似を!
「・・・よろしくお願いします」
お金って力だねー。