強引上司にさらわれました
年季の入った、やけに細くて高い建物。
ビジネスホテルみたいだ。
ここなら、それほど料金も高くないだろう。
こんな時間からすぐに住むところが見つかるはずもない。
ひとまずここに身を寄せるしかないか。
バッグを握りしめ、エントランスのドアを開いた。
フロントでは、にこやかな男性が出迎えてくれた。
「空いている部屋はありますか?」
「シングルでよろしければ、すぐにご用意できます」
「ちなみに、一泊おいくらですか?」
「朝食付きで一泊五千円となっております」
思った以上に安い。
ここに決めよう。
「それではお願いします」
チェックインを済ませて部屋へ向かった。
カードキーを差し込み中へ入ると、ベッドと小さな椅子が一脚だけ置かれたなんの変哲もない一般的なシングルルームだった。
バッグを椅子の上に置いてベッドにダイブし、両手両足を投げ出す。
晩ごはんは抜きなのに、お腹が減らないのが不思議だ。
生理現象に任せるまま目を閉じると、私はそのまま眠ってしまったのだった。