強引上司にさらわれました
「麻宮さん、ごめん。私、そろそろ行かなくちゃ。すぐに戻るからって出て来たから」
「え? あ、ちょっ……」
「私からはなにも聞かなかったことにしてね? 朝倉くんに怒られちゃうから」
三田村さんは突然話を切り上げると、ひらりと振った手を大事そうにお腹に当て、歩いて行ってしまった。
そんな彼女を見送り、取締役ひとりひとりにスケジュール表を手渡して、再び人事部へと戻って来た。
ふと課長のデスクを見てみれば、その姿が見えない。
「課長は?」
席にいた村瀬さんに尋ねると、「大学周りだよ」と教えてくれた。
そういえば、そんな報告を部長にしていたところを見たっけ。
「今日からしばらくは外周りじゃないかな」
「……そうですか」
椅子に全体重をかけるようにして座ると、キーとタイヤが鳴いた。