強引上司にさらわれました

「ケンカしてるなら、早いところ仲直りしたほうがいいよ。意地を張って得することはなんにもないんだから」


別れの線ではなく、ケンカに切り替えたようだ。

とにもかくにも、管理人さんの言葉は耳が痛い。
まさしく意地を張っているのだ。

どんどん自分が追い込まれていくことがいたたまれなくて、オートロックの扉に背を向ける。


「ちょっと用事を思い出したので……」


適当な理由を付けて、管理人さんから離れようと企てた。


「あら、朝倉さんに会っていかないのかい?」


それには答えず、作り笑いを浮かべて「どうもー」と頭を上げ下げ。
逃げるように足早に退散した。

そしてその夜から再び、課長のマンションに距離を置く日々が続くことになってしまった。


< 192 / 221 >

この作品をシェア

pagetop