強引上司にさらわれました
課長に体当たりするほどの勢いで、その胸に飛び込む。
「……おい、麻宮?」
課長が戸惑っているのは明らかだった。
両腕を上に持ち上げて、私の対応に困っているみたいだ。
「どうしてシカゴなんて!」
「どうしてって……」
「グローバル部への異動じゃなかったんですか? シカゴなんて聞いてませんから」
「ちょっと待て」
課長が肩をつかんで私を引き離す。
課長の顔を見上げたところで、少し離れたところにいる人物に気がついた。
グローバル部の高木部長だ。
私と目が合うと、人のよさそうな目を細めた。
私ときたら、部長の前で課長に抱きつくなんて……。
今さらながら、彼からパッと離れる。
「朝倉くん、私は先に行っているよ」
「申し訳ありません。すぐに追いかけます」
課長は上半身を傾けて部長にお辞儀をすると、もう一度私に向き直った。