強引上司にさらわれました

「それで、麻宮はどうしてこんなところにいるんだ」

「どうして課長はそんなに冷静でいられるんですか」


言いがかりもいいところだと自分でも思う。
でも、私がこんなにも混乱しているのに、課長ひとりが落ち着き払っているのなんておかしい。


「冷静もなにも……」

「一年間もシカゴなんて、このまま課長と離れるなんて、そんなの聞いてないんです」

「……一年間?」


課長が首を捻る。
目を瞬かせて、疑問に満ちた目で私を見た。


「……違うんですか?」

「いや、そうだ。そのとおりだ」


――やっぱりそうだったんだ。


「私、そんなの嫌です。このまま課長と離れるなんて」


課長の澄ました顔に得意気な色が滲んだ。
それを気にしている場合じゃない。
今ここで想いを伝えないと、次に会えるのは一年後なのだから。

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