泣けない大人
今のあたしなら
ほんとうに怖いときには
声を出すことなんて
できるはずがないんだ
って大人にも教えてあげられる。
そう―
被害者は
あたしだったんだ。
妹の彩花は
車の陰に隠れて
すすり泣きながら
小さくまるまってた
のがあたしの目に
今も
焼き付いている―
あたしは
いわゆる
『変質者』
にいたずらされた。
それ以来
あたしは男の子がなんだかこわくなっちゃって
学校では男の子と向き合ってまともに話したりもできなくなった。
やっと頑張って話せたとしても
目を合わせることもできなかったし
顔が真っ赤になっちゃってちゃんと話せることは
なかなかなかったんだ。