授かり婚~月満チテ、恋ニナル~
ここでもやっぱり、圧倒的に経験不足の私では、来栖さんの気持ちも言葉も、慮ることも出来ずに黙り込むしかなかった。
さっきまでと同じように、ただ聞き役に徹するしかない。


「『許せない』。『もう無理だ』……なんて言ったけど、そんな言葉で罵しる権利はなかった。俺がショックなのは、あっさりそう言って、速攻で別れを告げた自分自身に対してで。……彼女の方も、そんな俺の心中完全に読んでたんだろうな。ただ『わかった』ってそれだけだった」


そう言って言葉を切り、大きくはあっと息を吐いてから、来栖さんは再び空を見上げた。
どこか思い詰めたように唇を噛み、細めた目には小さく浮かぶ三日月が映っているのかもしれない。
なんとなくキラッと光って揺らいだように見える。


「お互いの心が離れてたこと、そんな状況になって痛感した。いつからだろう? 七年もの間、俺、なにやってたんだろう。なに見てたんだろう……そんな風に思ったらさ。なんっつーか……彼女にも申し訳なくて。心が離れていったのは、俺が悪かったんだろうなー……ってさ」


そう呟く声が、確かに震えたのを聞き取った。
私は無意識で来栖さんに一歩近寄っていた。
薄く開いた唇が震えているのを見て、切なくて、やりきれなくて、思わず彼の顔を覗き込んでしまった。
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